はじめに
この記事は、ピアノ経験者の僕が友達にピアノを教えようとした時に、どのようにしたらわかりやすく教えることができるのかわからずに困ったことがあり、ピアノの先生はどのようにして教えているのか気になったので書くことにしました。
この記事は僕の知り合いのピアノの先生に書いてもらいました。
先生は、歌科だったそうですがピアノを得意とされています。
趣味でビオラも弾いており、某大手音楽教室の先生を経て、ウズベキスタンで2年間音楽の先生をされていた方です。
この記事が大人への教え方がわからないピアノ講師の先生の参考になればと思います。
大人になってからでもピアノは上達する
「始めたいと思った時が”一番若い時”なのよ!これから死ぬまでの人生の中で一番若い日は今日なんだから」
これは、筆者の恩師の言葉で、今でも筆者の心に深く残っている言葉です。
そう、人生何事も「やりたい」と思った時が「始め時」なのです。
ピアノや、ピアノに限らず音楽を始めたいと思っている大人の方の中には「今から始めたんじゃ遅すぎる」とか「子どもの頃から習っていないとできるようにならない」とか、そのような事を仰って、始める前から諦めている方もいらっしゃいます。
それは勿体無さすぎる!
もちろん、プロのピアニストやプロの音楽家を目指すならば、手ほどきを受ける年齢は小さければ小さいほど良いのです。
これは間違いありません。
成長期に習った事は身体に染み付きますし、子どもの吸収力は大人にはとてもとても敵わないものですから。
ただ、趣味として、楽しみとして、音楽をやりたい!ピアノを弾きたい!という方は、何歳からでも始められるのです。
また、そういった方は、つまらない練習曲ばかり弾いて、武者修行のような辛い日々を送る必要など全く無いのです。
弾きたい曲を弾くために、手段は選ばず、最短の方法で目標や夢に到達する事ができるのです。
だから、大人になってからピアノを始めても、好きな曲が弾けるようになると筆者は心からそう言いたいのです。
大人の初心者生徒さんを持つピアノ講師の悩み
さて、そのように「大人になってからピアノを始めたんじゃ、遅すぎるかなぁ」と不安を抱えつつも、「でも憧れのあの曲、いつか弾いてみたいんだよな」と希望を胸に燃やしてピアノを始めたいという方は、大人の方を受け入れている音楽教室、ピアノ教室に通うでしょう。
そこで彼らを迎え入れて音楽、ピアノの手ほどきをするのが、ピアノ講師の皆さまとなるわけです。
筆者も、大人の初心者さんを教えた事があります。
とても頑張ってレッスンされて、65歳からピアノを始めて、3年後に月光ソナタの1楽章をフルで楽譜通り弾ききったという伝説を残されました。
大人の生徒さんを持ってレッスンする上で、悩まれるポイントは、次のようなものだと思われます。
大人の生徒へのレッスンで悩むポイント
- 子どものように教えた事を吸収してくれない
- 頭で分かっていても身体が言う事を聞かず、ご本人がイライラしてしまう
- 弾きたい曲があるだけに、簡単な練習曲やテクニックを鍛える教材では飽きてヤル気を無くしてしまう
- 仕事が忙しくて練習する時間がとれない
それぞれ、対策を考えてみましょう。
大人へのレッスンでの悩みの解決法
子どものように教えた事を吸収してくれない
記憶力も、柔軟性も、吸収力も、子どもの方が大人よりも遥かに高いです。
だから、子どものように教えた事がすぐ身についてグングン成長していくというのは難しいでしょう。
反面、大人には「ロジカルに理解する」能力が備わっています。
子どもに対しては有効になりうる「先生の教えた通りにやれば上手になるのよ」という刷り込みの教育ではなく、「なぜこうなのか」や「こうするとどうなるのか」というロジックをきちんと説明する事により、理解度がグンと上がり、飲み込んでくれるようになります。
例)なぜ、「猫の手」や「卵をもつような手」で弾かなければならないか説明する、など。
頭で分かっていても身体が言う事を聞かず、ご本人がイライラしてしまう
大人になると理解力が上がる半面、運動能力が低下しますので、頭では分かっていても身体が思うように動かないという悩みにぶつかる事があるでしょう。
そうなると人はイライラしてしまうものです。
講師の先生方は決してそのイライラを移されないように、落ち着いて、まずは生徒さんのイライラを丸っと受け入れてあげてください。
「思うようにいかなくてイライラしますよね~。ここ、本当に弾きにくいんです」 などと声をかけてあげて、同調します。
そして、ロジカルに攻略法を伝授しましょう。
もっとも効果的なのは、メトロノームを使った「修行」です。
子どもよりも飽きっぽくない大人は、明確なゴールがあれば、根気強く練習に励みます。
メトロノームを使ってとてもゆっくりから、1メモリずつ速くしていくという方法で、ひたすら繰り返す修行をする事で、徐々に身体の方もついていけるようになります。
簡単な練習曲やテクニックを鍛える教材ではヤル気を無くしてしまう
「この曲が弾きたくて」という夢をもってピアノを始めた方にとって、ハノンやバーナムなどはつまらなく感じる事でしょう。
自分はこの曲が弾きたいのに…と不満を抱えて、やる気も失ってしまいます。
でも先生としては、生徒さんが弾きたいと言っている曲は難しすぎてまだ早い…と思われるかもしれません。
でも、そこはもう諦めましょう。
やりたい曲があるなら、それに挑戦してもらうべきです。
大人の趣味のピアノは、筆者は段階を踏んで一歩一歩上達するような子ども向けのレッスンと大きく変わるものと認識しています。
きちんとセオリーに則ってレッスンする必要なんて無いのです。
弾きたい曲があるならば、それにチャレンジすれば良い、ただそれだけです。
先生の苦労は多くなってしまうと思いますが、生徒さんのヤル気の炎を消してしまわないように手助けしてあげましょう。
きっと生徒さんが曲を演奏できるようになった時には、苦労が大きい分、喜びも大きくなるはずです。
次の章で、弾きたい曲が難しすぎる場合の対応について言及いたします。
仕事が忙しくて練習する時間がとれない
これは大人の生徒さんに定番の悩みですね。
生徒さんも悩みますし、先生も悩みます。
ピアノは自宅での継続的な練習がものを言いますから、週に1回、数十分だけチョロッと弾いただけでは何も上達しません。
どうにか時間を作っていただくしか無いのですが、これにも工夫できるところは何点かあります。
まず、通勤中や家事の最中などに、今取り組んでいる曲をとにかく聞き込んでもらい、曲の全容を叩き込んでもらう事が挙げられます。
よく知らない曲や、フワッとしたイメージだけしかもっていない曲は、きちんと曲のすみずみまで染みつくぐらい聴き込んでもらうのが良いでしょう。
そして次に、いつでもどこでもすぐにできるフィンガートレーニングを勧めます。
これはピアノの先生ならばどなたでも1つ2つはレパートリーがあるのではないでしょうか。
誰でも知っている有名なところで言えば、5本の指を全てくっつけて、向かい合った1対の指をくるくる回す、などです。
それから最後に、どんなに忙しくても、少しだけでもピアノに触るようにお願いする事です。
これは、その方の忙しさによりますが、例えば毎日10分や2日に1回5分など、ほんの少しでも構わないので「継続する」週間を身につけていってもらいます。
大人のピアノレッスンで最初にやるべきこと
大人のピアノレッスンで、最初にやるべき事は、生徒さんとの意識の擦り合わせです。
必ず確認すべき事項をまとめました。
- ピアノをはじめた動機
- 目標(なんとなくピアノが弾けたら良いなぁ、なのか、この曲が弾きたい!があるか)
- どのくらい自分で練習できるか(そもそも自分で練習するという感覚の無い方もいらっしゃいます)
この3点だけは先に確認しましょう。
ここの認識が一致しないと、互いに「こんなはずじゃなかった」となります。
なんとなくピアノが弾けたら良いな、という人へのレッスン
彼らは人生の楽しみとしてピアノを選んでくれたのです。 嬉しいですね。
そんな彼らとのレッスンで大切にしたいのは「とにかく楽しい」という事。
超簡単な曲でも良いですし、「ドー」と伸ばしているだけで先生が素敵な音楽を弾いてくれて、なんとなくアンサンブルを楽しんでいる風にしても良いのです。
上達しない、という事を不安に思ったり、どうにかしなきゃ、と焦る必要はありません。
弾きたい曲がある人へのレッスン
先ほども少し述べましたが、こういった方には、セオリーも何も無い、割とスパルタなレッスンをするのが良いでしょう。
先に「この曲を楽譜通り弾けるようになるためには、このくらい練習しなければなりません」とハッキリ告げます。
「毎日2時間ずつ練習しないと弾けるようになりません」でもなんでも良いです。
「嫌なら、簡単にアレンジした楽譜があるのでこちらを使いましょう」という代案も用意しておくと良いでしょう。
ここで生徒さんに火がつけばこっちのものです。
レッスンはとにかく短く区切って、ここまで弾けるようになったら次の譜読みに進む、という方法を取ります。
そして忘れてはならないのが「弾けるようになった場所は毎日必ず復習してください」という事。
「これをしないとあっという間に弾けなくなりますよ」と脅しても良いです。
大人の方への具体的なピアノレッスン法が分からないという方へ
他の先生の大人へのレッスンノウハウ・ロジカルな説明方法を学ぶ
大人の生徒さんには様々な事情があり、性格も目標もライフスタイルもポテンシャルも人それぞれです。
セオリーはあまり気にせず、一人ひとりの生徒さんにあったレッスンを展開していくのが良いのですが、そもそも大人の方を対象にしたレッスンの組み立て方、導入方法、一体どうやって指導したら良いか分からない、という方も、もしかしたら多いのかもしれません。
そんな方に提案する方法は、人気ピアノ講師の方のレッスン方法から学ぶ方法です。
こちら「30日で弾ける初心者向けピアノレッスン」の海野真理先生は、自宅でDVDを使ってピアノを学ぶ事ができるような教材を開発し、今人気が出ているそうです。
筆者もその一部を見てみましたが、うん、確かに分かりやすいです。
椅子の座り方から手の形まで、ロジカルな説明をしっかりとされています。
このノウハウを学び、あとはそれぞれの生徒さんの個性や能力などに合わせたレッスンを組み立てていければ、きっとピアノの事を好きになってくれたり、人生で音楽を楽しんでくれたりするでしょう。
ピアノ講師向けの勉強会やセミナーもありますが、なかなか他の先生の実際の指導の様子を見る機会も無いと思いますので、この教材はそういった意味でもとても役に立つと思います。
以上「【ピアノ講師向け】大人の初心者へのピアノ 教え方・レッスン方法」でした。